フェンネル〈ブロンズフェンネル〉の育て方



フェンネル〈ブロンズフェンネル〉の育て方

今回は、フェンネルの詳しい育て方を解説し、実際に我が家で育てたブロンズフェンネルの栽培レポートをお送りします。

フェンネルは、とても育てやすいのに、葉、茎、花、種がそれぞれハーブとして利用することができ、胃の調子を整える効果やダイエット効果なども期待されています。

さらに、常緑植物なので、一年中収穫が可能なだけでなく、冬の寂しい季節でもレースのような繊細な葉がお庭を彩ってくれます。

そして、なんといっても甘く爽やかな香り
風が吹いたり、手で少し揺らしたししただけでも香りを楽しむことができ、おすすめ度の高い植物です。


みなさんのお花選びの参考になればと思い、以下の点に着目して成長過程をお伝えしていきます。
どのくらいの成長スピードなのか?
どのくらい大きくなるのか?
どのくらいの間、花が咲くのか?
暑い夏や、寒い冬に枯れてしまわないのか?
常緑なのか?
いつ芽吹くのか
種や実はどのくらいとれるのか?
私の住まいは千葉県ですので、関東・東海にお住まいの方は特に参考になるかと思います。

それでは、見ていきましょう。

フェンネルの特徴

フェンネルはパセリやセロリと同じ、セリ科の多年草ハーブです。
手で葉を揺らすだけで、甘いのに爽やかな香りが鼻をくすぐり、レースのように繊細に広がる葉は、見た目にも美しいですね。
草丈 は1.5m〜2mほどと高く育ち、大雨や風の強い日には倒れ込んでしまうこともあるので、支柱などで支えてあげると良いでしょう。
南ヨーロッパ原産のハーブなので、日本の温暖地では夏越し、冬越し共に問題ありません

古くから世界各地で栽培され、今でも、葉、茎、花、種がそれぞれ、適した料理に使われています。
インドカレー屋さんのレジ横でよく見かける口直しのフェンネルシード、実は果実なんです。
言われてみると、嚙んだ瞬間に口の中に広がる甘く爽やかな香りは、果実そのものですね。
種はそのまた奥の、果実の中に入っているんです。
後でも詳しくご紹介いたしますが、フェンネルシードは、消化促進のための生薬としても利用されているんですよ。

フェンネルとディルの違い

小さなころの見た目は大変似ていますし、どちらも魚料理に合うハーブとして有名で、間違えて使ってしまったり、代用したりしてもあまり問題はありません。

しかし、植物学的には、フェンネルはウイキョウ属、ディルはイノンド属といいまったく違う植物です。
大きな違いは、多年草のフェンネルに対し、ディルは一年草なので、花が終わると枯れてしまいまうところです。
また、成長後の草丈も、フェンネルが1メートルを越えるのに対し、ディルは大きくても50cm前後にしかなりません。

香りや味は、フェンネルの方がはっきりとしていて、デイルはやや酸味が感じられます

フェンネルとディルは、近くで育てると交雑してしまいやすいので、離して育てるのがおすすめです。

フェンネルの花言葉

フェンネルの花言葉には、「称賛」「力量」「よい香り」「精神の強さ」「背伸びした恋」「強い意志」 などがあります。
フェンネルの甘いだけじゃない、芯の通った爽やかな香りをかぐと、「強さ」や「力量」という言葉も頷けますね。

フェンネルの効果

フェンネルには大きく分けて、4つの効果があると言われています。

フェンネルの効果① 胃の調子を整える

フェンネルには、消化酵素の分泌を促進する効果があるとされています。
消化を助け、胃腸に溜まったガスも除いてくれるので、食べ過ぎ・飲み過ぎが原因の胃もたれや、便秘、お腹が張っているときなどに効果的です。

フェンネルの効果② ダイエットに効果的

フェンネルには利尿・発汗作用があります。
体内の水分の排出を促すことで、むくみを改善させ、血の巡りが良くなるので、新陳代謝が活発になります。
上手に使えば、ダイエットの強い味方になってくれそうですね。

フェンネルの効果③ 口臭ケア

フェンネルはその爽やかな香りから、口臭予防としても利用されています。
インドカレー屋さんのレジ横などには、フェンネルシードがそのまま置いてあることもありますし、「ムクワス」というフェンネルシードをカラフルに砂糖コーティングしたお菓子が置いてあることもありますね。

フェンネルの効果④ 女性ホルモンを活性化

フェンネルの甘い香りには、女性ホルモンを活発化させる作用があるといわれています。
母乳の出をよくしたり、更年期障害を緩和する効果が期待されています。

フェンネルの育て方・環境編

フェンネルに適した日当たり

フェンネルは日当たりのよい場所を好みます
直射日光、西日を避けた方が無難ですが、暖地の我が家では、直射日光の良く入る南側の花壇で地植えしています。
耐暑性、耐寒性も強く、特に気にかけなくても、夏越し冬越ししてくれました。

フェンネルの栽培に適した土

フェンネルの栽培には、水はけがよく、適度に保水性のある土が適しています。
また、土のpHを中性よりの弱アルカリ性に調整すると良いでしょう。
調整が難しい場合は、市販のハーブ用の土を利用するのがおすすめです。

フェンネルの育て方・ここはおさえて!

フェンネルの水やり

フェンネルは、やや乾燥気味な土壌を好みます
地植えのフェンネルの場合、根付いてからの水やりは降雨のみで大丈夫でしょう。
加湿に弱いので、適度に収穫して葉が込み合わないようにしてあげます。

鉢植えのフェンネルの場合は、土の表面がかわいたら、たっぷりと水やりをします。
このとき、葉には水をかけず株元のみに水やりをし、加湿状態になることを防いであげると良いでしょう。
冬場は生長が止まりますが、鉢植えのフェンネルは定期的に水やりを行います。

フェンネルの肥料

地植えのフェンネルの場合、肥料を与えなくてもすくすく育ちます
実際、筆者宅でも、肥料をあげたことはありません。
ただ、肥料が原因か分かりませんが、収穫したフェンネルシードは良く熟していても小ぶりのものが多かった印象です。

肥料を与える場合、春まきのフェンネルは5月から、秋まきのフェンネルは3月から、1ヶ月に1回追肥していきます。
一株あたり10g程度、即効性のある発酵油かすなどの肥料が適しています。

何度も追肥するのが大変な場合は、春と秋に緩効性の肥料を株元に施す方法でも良いでしょう。

フェンネルの病害虫

フェンネルによくみられる病気

特にかかりやすい病気はありませんが、加湿状態になると、うどん粉病などのカビが発生することがあるようです。

フェンネルによく付く虫

キアゲハの幼虫、カメムシ

筆者のフェンネルには、大きなカマキリが2匹住みついていて、よくキアゲハの幼虫を捕食しています。
カメムシを見たことは一度もありませんが、もしかしたら気付かないうちにハンターカマキリに捕獲されているのかもしれません。
料理に頻繁に使っているので、薬剤をかけたことはありません。
ハンターがいないフェンネルの場合は、害虫を見かけたら早めに対処することをおすすめします。

フェンネルの育て方・もっと詳しく

フェンネルの種まきと生育適温

フェンネルの種まき時期

発芽適温は、18℃~22℃です。
暖地の場合は、秋まきの9月~10月、寒地の場合は、春まきの3月~5月がおすすめです。

フェンネルの種まき方法

直根性の植物なので、直まきが適しています。

苗を育てる場合は、セルトレイなど小さなものではなく、9cmほどのポリポットに播いて生育させると良いでしょう。

こぼれ種でも発芽するほど丈夫です。
以前、インドカレー屋さんでもらった口直し用のフェンネルシードを試しにポットに撒いた際も、本当に発芽してびっくりしました。

フェンネルの植え付け

フェンネルの苗の選び方

種まきの際にも触れましたが、直根性の植物であるため、移植を嫌います。
なるべく花をつける前の若い苗を選ぶ方が、移植ダメージからの回復が早く、スムーズに根付きしてくれます。

フェンネルの植え付け方法

移植の際などに少しでも主根を傷つけてしまうと、根付かず枯れてしまうことがあるので、注意が必要です。
根をほぐさず、傷つかないよう丁寧に扱い、そのまま植え込みたい場所に埋めるようにしましょう。

フェンネルの支柱立て

花をつける頃になると、背丈がまたぐんと伸び、頭が重くなってくるので支柱を立てないと倒れ込んでくることがあります。
この頃になるとフェンネル自体も茎が太くしっかりしているので、あまり細い支柱だと風の強い日などにはなぎ倒されてしまいます。
筆者宅では直径1㎝程のアーチ型の支柱を2つ使い、挟み込んで固定しました。
近くにフェンスや柱がある場合は、麻ひもなどで縛って固定するのも有効です。

フェンネルの収穫

フェンネル茎・葉の収穫

加湿を防ぐためにも、込み合ってきたら定期的に収穫するのがおすすめです。
どちらかというと、若くてやわらかい葉の方がおいしくいただくことができました。
乾燥したものより、フレッシュのものの方が香りが強いので、お料理に使う直前に収穫することをおすすめします。

フェンネル株元の収穫

フェンネルの株元は成長するとこんもりしてきます。
この部分に土寄せをして、株元に日が当たらないようにすると、ネギのように白く柔らかく育ち、収穫して食べることができます。

フェンネルシードの収穫

花が咲き、種が熟成すると、フェンネルシードになります。
筆者宅では、9月の上旬ごろから収穫できるようになりました。(2022年) 
数粒口に入れて噛むと、爽やかな甘い香りが鼻に抜けてとても気持ちが良かったです。
ほのかに甘みも感じられ、ついつい撒く分も忘れてつまんでしまいそうになりました。

フェンネルの冬越し・夏越し

 耐暑性、耐寒性も強く、特に気にかけなくても、暖地では問題なく夏越し冬越ししてくれました。

フェンネル〈ブロンズフェンネル〉の栽培レポート

栽培管理

前年(2021年)の秋頃、松原園芸さんで苗を購入しました。

写真では分かりにくいのですが、この上にひさしがあり、小雨程度では降雨もあたらない乾燥気味な花壇で育てています。

秋、冬の間成長が止まるので、4月の写真のような姿のまま2回の降雪にも耐え、常緑で冬越ししてくれました。

昨年(2021年)は花をつけなかったので、今年(2022年)は頑張って育てていきたいと思います。

2022年4月2日
暖かくなり、
モフモフの枝が伸びてきました。

2022年4月29日
あっという間に、結構な大きさになりました。
まだまだ、生育旺盛のようで、
茎の中心部にはリスのしっぽのような
黒い新芽が出続けています

降雨が当たりづらいので、地植えですが、定期的に水やりを行いました。
春の間は、1週間に1度程度、夏の暑い時期は、3日に1度程度です。

開花

春から夏にかけてぐんぐんと伸び、丈が1メートルを越えたころ、蕾が付きました。
翌日には蕾が広がり、数日かけて小さな黄色い花が一つ一つ開いていきました。

ブロンズフェンネルの蕾
2022年7月1日
ブロンズフェンネルのつぼみがつきました。

ブロンズフェンネルの花が咲きはじめなところ
2022年7月2日
蕾が広がり、
花が咲き始めました。

ブロンズフェンネルの花が満開になったところ

2022年7月17日
満開になりました。

この後もどんどん蕾をつけ、たくさんの花を咲かせてくれました。
丈も伸びつつけ、7月の終わりころには、2メートルを越えていました。

8月の中旬~下旬になると花が枯れはじめ、実が成長し上部が重くなってきました。
風の強い日には、株が倒れるようになり、支柱で固定し始めました。

この頃から、キアゲハの幼虫がたびたびつくようになりましたが、住みついていたカマキリが捕食していました。
そのため、筆者宅ではあえて捕まえたり、薬剤をかけたりはしませんでした。
しかし、ハンターのいないフェンネルの場合、見つけたら早めに対処しないと、せっかく結実した種がすぐに丸裸にされてしまうので、注意が必要です。

ブロンズフェンネルについたキアゲハの幼虫

2022年8月25日
5齢まで成長した
キアゲハの幼虫がついていました。
この頃になると、食欲は底なしです。

収穫

8月の下旬~9月の上旬になると、花の枯れたところから、次々に実が結実していきました。
早いものでは、9月の上旬にフェンネルシードが収穫できました。

近くを歩くだけでも、甘く爽やかな香りがし、数粒口に入れて噛むと口中に甘い香りが広がりました。

ブロンズフェンネルの実 フェンネルシード
2022年9月5日
ぷっくりと太ったフェンネルの実です。
この状態でも味見をしてみました。
独特の香りは素晴らしく、
ほのかに甘みもあるのですが、
あとから少しだけ辛味を感じました。

フェンネルの種の収穫。
2022年9月5日
すっかり乾燥し、
茶色くなったフェンネルシードです。
早めに種になったものは、気持ち小ぶりに感じました。
こちらは、辛味はなく甘みだけが口に残りました。

 

【まとめ】フェンネルの育て方3つのコツ

フェンネルの育て方コツ① 背丈が高くなってきたら支柱を立てよう!

花が枯れ、実が膨らみ始めると、上部が重くなり倒れやすくなります。
そうなる前に、花が付きはじめたら支柱を立てて固定したり、フェンスや柱に麻ひもなどを使って結びつけたりすることをおすすめします。

株が大きくがっしりしているので、頑丈な支柱を選ばないと、支柱ごとなぎ倒してしまいますので、注意が必要です。

フェンネルの育て方コツ② 病害虫の対処は早めに!

フェンネルは、せり科の植物なので、キアゲハの幼虫が付きやすいです。
幼虫が小さなころは食害も少ないのですが、大きくなってくると、ものすごい勢いで葉を食べつくします。

見つけたら早めの対処が必要です。
方法としては、2つ。
①専用の薬剤を使う。
②食用に育てていて薬剤を使うことに抵抗のある場合は、一匹づつ割りばしなどでつまんで駆除する。

フェンネルの育て方コツ③ 上手に収穫してお料理に活用!

フェンネルは、一年中収穫が可能で、葉、茎、 花、種それぞれを料理に使うことができます。
また、乾燥したものより、フレッシュのものの方が香りが強く料理にも向いているので、スパイスとして購入するより、だんぜん育てたものをその都度収穫して使う方がおすすめです。

筆者宅でも、新芽をそのままサラダに入れたり、魚をソテーするときに加えたり、ケークサレに細かくちぎって入れたり、四季を通してよく使うハーブの一つです。

今年は、フェンネルシードの収穫にも成功したので、インドカレーにも挑戦してみたいです。




最後までご覧いただき、ありがとうございました。